それからも、何度か2人で話す機会はあったけど
入院してからは行く気がしなかった。
「ギター持ってきて、歌の宅配してくれー」
と電話があったけど
「んじゃ、また行くわ」
と、ノビノビになっていた。
オカサンの好きなWild Horsesを覚えたけど
結局、聴かせる事は出来なかった。
西小学校の同級生の女子から
「たっけん、いってあげてー」と電話があった。
「行ってみるか」と行ったのが、オカサンが他界する4日前になっていた。
もう、立てないであろう体を見て、左手がずっと震えていた。
オカサンは俺に手を差し出して、俺の手を握った。
「おー」とか「あー」しか言わなかったが
会話はちゃんと出来ていた。
きつい冗談を言うと、昔みたいに「あほー」と言っていた。
最後の日
病院にはたくさんの人が面会の順番を待っていた。
長い列の中を通り病室に入った。
カオリちゃんが「たっけん来たよ」と言うと、両手をあげた。
横に行って手をにぎった。
話をしたが、ほとんど声は出なかった。
もう だめなんだ と はっきりわかった。
久しぶりにお父さんとお母さんと話をして病室を出ると
正面に次郎ちゃんがいた。
次郎ちゃんは面会の順番を待っていた。
車に戻り、次郎ちゃんを待っている間、涙が止まらなかった。
ナボから電話があったが、じゃべれなかった。
そして、その夜、オカサンは行ってしまった。